アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画「誰も死なない」。2008.11.22~12.19。下北沢トリウッド。

映画「誰も死なない」。2008.11.22~12.19。下北沢トリウッド。

 

2008年12月13日。

 この映画が出来ていたのは、ゲイサイの時に聞いていて、知っていた。でも、ミスターのロリコン映画だという話も聞いていたし、そして、ゲイサイの会場で見れたかもしれない、というのも知っていたが、でも、ほとんど興味はなかった。
 
 だけど、村上隆の「FM芸術道場」を聞いている妻がミスターの映画の話を毎週聞いていて、そしてそのテーマソングが相当気にいったみたいで、だから、見に行きたいと言い出した。意外だった。
 中でも、ミスターが女子中学生を主人公にして、その制服にこだわったとか、靴を焼きリンゴの赤にしてくれ、というので相当時間をかけた、とか、ミスターが妥協しないようにと、結局長編映画と同じくらいの予算がかかったとか、それから最初にテーマソングの歌詞を書いたときに、ふざけたものを書いたというので、村上隆にものすごく怒られた、とか、だから、作品として凄いのではないか、という興味があったようだった
 
 下北沢駅に映画館はある。
 駅で降りて、アンゼリカでパンを買って、トリウッドを目指した。餃子の王将を目印に、道を曲がり、進み、ミケネコ舍はあったと思ったから、あ通り過ぎたんだ、と気がつき、戻ってみたら道を曲がったすぐのところにさりげなく看板もあり、2階へ上ったらあった。
 狭いロビー。折りたたみの丸い座椅子のいすが4つだけあり、12時45分から座って、午後1時30分の回まで待つことにした。ショートフィルムの専門の映画館は珍しく、でも、こういうところに来ていると、また来たくなるとも感じた。
 

 そうしているうちに時間が過ぎ、午後1時15分になって、ドアがあくと、中から4、5人だけが出て来た。座り放題だから前から3番目に座る。あとは関係者らしき招待券を持ったカップルと、秋葉原から来たような若い男性の2人組だけだった。一番前に大きいめのリュックが置いてあって、関係者かと思ったら、前の上映も見ていた若い男性で、また見る気のようだった。

 

  始まると、最初はごあいさつ。そして、村上隆の監督作品の映画の予告編。それから本編が始まる。このテーマソングは確かにいいし、聞いていると、耳に残ってずっと頭の中で回るように響く。画面はキレイで、そして体をなめるような映し方もどうかと思ったが、それぞれぜんそくがあったり、背景がいろいろとありそうで、そして、短い場面がはさまれて、けっこうキレイだったり、そして、制服の袖の長さや靴やその完成度というか、妄想の実現度は確かに異常に高そうだった。
 
 だいたいサバイバルゲームで迷彩は目立たないように、のはずなのに、可愛く見える、という事がすべてに優先されていて、大人が出てこない。ばあさんやじいさんだけで、ミスターが最後に警官役で出てきたりするくらいだった。
 
 でも、今の時代を生きている中学生という感じがしたのは自分がトシをとったせいだろうか。サバイバルゲームで負けて、それから、またそれのリベンジをする、というだけの話だけど、なんとなく、今を生きる困難さみたいなものまであったようで、でも、ああいう描写はアートというくくりがないと、ロリコン、変態と言われそうで、でもアートというくくりの中だから、昔からハダカが許されていたのだから、そういう伝統の中にあるといえばあるわけで、見たあとも、その場面はいろいろ回って、そして、その歌がずっと頭の中で歌っている。茶太というシンガーだという事を知った。
 

 映画が終わっても、リュックの彼は、もしかしたらまた見る気で、今日ずっといるのかもしれない、とも思った。でも、ここにしかない時間が確実にある。そして、それはすぐに去ってしまいそうなはかない感じまである。

 でも、おもしろかった。という話をしたら、面白いというより、人の思っていることを見せてもらった、作品を見たときと同じ感じ、と妻が言っていいた。ずっと中学3年生でいたい、と昔思ったらしい妻は、でも、出て来た子達がかわいかった。あれがそうじゃないと、やっぱり違うものになってしまったと思う、というようないい方をしていた。

 

 見てよかった。なんだか凄い、と思った。頭の中に残るといえば、今年は「アキレスと亀」と、この「誰も死なない」で、見てよかった、と、今は夜中だけど、まだそう思っている。パンフレットも買えばよかった、と思っているくらいだ。

 

 

(2008年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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