アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

村上隆×森川嘉一郎 特別対談「芸術×サブカルチャー×場所」。2013.11.30。明治大学リバティアカデミー。明治大学中野キャンパス。

2013年11月30日。

 中野に出来た新しい明治大学の校舎があって、その記念も含めての企画として村上隆トークショーが組まれた。森川氏は、明治の先生で、ゲイサイ大学の時に、圧倒的に完璧なプレゼンテーション能力を見て、これがあってこそ、「おたく展」という秋葉原好きなオタクの家を再現したような展覧会をビエンナーレで行えたのだろうと思えるような力だった。

 

 その人と、村上隆が語る。この前、カイカイキキギャラリーで対談も行ったし、今回もあるし、たしか人前で話すのが好きでなかったはずだけど、なにか気持ちの変化みたいなものもあったのかもしれない、などとも思って、中野ブロードウェイに行って、ギャラリーを三つ回ってから大学へ行く。

 

 キレイで立派な建物だった。受付で名前をチェックされるわけでもなく、その中は広く300人以上が入れる講堂?だった。前の座席の背中から板を引き出して倒すと机になるという構造だった。初めて見たかもしれない。

 

 最初は鳥取県の人がしゃべっていた。鳥取県が協賛しているからその観光などの宣伝の時間は必要なのかもしれないが、せっかくだからもう少し効果的に出来るのではないか、などと思っていた。
 

 森川氏のプレゼンテーションは、また本当に完璧だった。この人の「効果的なプレゼンテーション」という講座をやったらかなり人が来そうな感じがするくらいだった。

 

村上隆の発言から、いくつかを残してみる。

 

 …成功した人間は、若い人にチャンスを与えるべき、というどこかキリスト教的なことかもしれないけれど、それがgeisaiをやってきた動機の一つでもある。

 

 …geisaiは、12年やってきて、現代美術は日本には向かないというのがはっきりと分かった。それでも初志貫徹でプロへの導線引きをしたくて、審査員をたてることは続ける。だけど、混乱はしている。これまでGEISAIから30人くらいはプロとしてデビューしているから、責任はある程度果たせたのかもしれないが、プロとアマの融合が進んでいる今の時代の流れからは離れて行っているようにも感じている。だから、混乱している。

 

 …ロンサムカーボーイは、よくこんなものが16億で売って日本の恥、みたいに言われるけれど、作った時は350万円で取り分は半分で制作費も出なかった、ということだった。それで詐欺呼ばわりされるのは悲しい。イノチくんも、なぜか映像が流失して、それで気持ち悪いとか言われている。

 

 …ヴェルサイユでの展覧会も、あれは町おこし的な意味があった。特に冬に観光客が減る時に、人を呼ぶためにアートプロジェクトをひらいている。

 

 村上氏と森川氏との対話もある。

 

 村上氏は、ブロードウェイにギャラリーを開いて、その事で少しは貢献しているのではないか。シャッターが降りているような場所しか貸してくれないけれど、最初は違和感があったけど、ここのところ周りに少し店が開くようになってきた、と言ったら、森川氏が「貢献していると思います」と言ったら、村上隆が「ありがとうございます」と大きい声で言った。ほめられないので、という言い方をしていて、それは本当なのだろうとも思った。

 

 さらに、ギャラリーの話について、森川氏は、こんな言い方をしていた。朝霞にあったスタジオに行った時に、きれいなギャラリーに興味はない、と言っていたのに、元麻布のギャラリーや事務所がすごくきれいなのはなぜ?という話をした時に、よくぞ聞いてくれました。話したいことを誘導してくれますね、という言い方をしてから、こんな話をした。

 

…ぼくは日本社会への恨みがすごくあるんです。朝霞の頃、(ここで森川氏が、朝霞のことをあさつゆと言っているのを柔らかく訂正した)プレハブのスタジオに海外から来た客は喜んでくれた。だけど、日本の企業の人達は嫌な顔をして、仕事を途中でやめたり、ということも起きていた。佐藤可士和氏に聞いたら、すごくきれいな事務所で、こうしないとクライエントが安心しないじゃん、と言われて、それで同じ設計者に頼んだ。ただ、今でも違和感がある。いつも入間のスタジオにいる。最初は、カウンターだけでやっているので、もういいかな、という気持ちがある。

 

 …また中村政人とのケンカなどを出して、「3331」をやっていて、人助けだと思うから、今はすごいと思っている。自分達の世代が、公に頼らずにそういうことをやっている。今も公は信じられない。中村君ならうまくやれるのかもしれないけれど…。

 

 本人の根深い怒りや不信感が、人に嫌いな感情を起こさせるのかもしれない。

 

…クールジャパン、大嫌い。(こんなに感情むき出しで言うのが特になるとは思わないが、ただ、それだけ純粋なのかも、とは思った)。

 

 …世の中の理不尽を小さい頃見聞きして、反骨心があって世界に出ていって、でも、そういうことはもう今は…今は小さい子どもに対して、作っている。アメリカの展覧会は、ある時間帯になると無料になって、貧しい層もやってきて、村上の展覧会は映像もあるから、時間をつぶせる、ということで人が来る。そして、子ども相手の作品を作ろうと今は思っている。

 

 感情が強い。この年齢でこれだけむきだしは珍しい。やはりアーティストなのだと思う。
 
 質問の時間になった。
 

 2人目の質問への答え。村上氏は、話す時は相手の目を見ている。国内のアートを仕事にする話題。日本のコレクターも海外の作品を買っている。私も95%は、海外のコレクター。国内では、今はかなり汚い商売もやっている。私は触れたくない。汚いので。

 

 すごい言い切りだった。すごく純粋なのではないか。潔癖といってもいいくらいに、ということを思う。

 

 そんな話のあとに、村上氏は森川氏に語っていた。

 

 日本の中で夢をかなえるメソッドを教えて欲しい。私は何でもない会話自体が嫌い。でも、そういうこと含めて森川さんはちゃんとやっていると思う。

 広告代理店は大嫌い。でも、それを抜きに日本でやっていくのは難しい。そこを森川さんに学びたい。

 クリエーターと、お金を作る人の間のエージェンシーがいない。それを育ててくれませんか。

 

 村上隆という人の発言を聞いていて、これだけ純粋な人は珍しいのかもしれない、と思う。

 

 

 

 

(2013年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

村上隆×森川嘉一郎 特別対談「芸術×サブカルチャー×場所」』

https://academy.meiji.jp/course/detail/1332/

 

 

amzn.to

 

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