アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

『辻田真佐憲×西田亮介×東浩紀 『21世紀』は「2022年」から始まった』。2022.12.29。ゲンロンカフェ。

『21世紀』は「2022年」から始まった』。
辻田真佐憲×西田亮介×東浩紀

https://genron-cafe.jp/event/20221229/

 

 中年になってからの再びの「就職活動」をしたとき、履歴書は送ってもすぐにポストに戻り続け、「お祈りメール」ばかりが届いたり、何の反応もなく、午後からの限られた時間の非正規の仕事ばかりを申し込んでも、全く決まらず、そのまま1年が経った。

 

 あとから考えたら、かなり気持ちが暗く重くなっていたのだけど、2013年の、その頃に、ゲンロンカフェという場所が始まって、通常のトークイベントをはるかに超える長時間、人と人とが、真剣に話し続ける姿を見て、そのことで、支えられていた気持ちもあって、だから、勝手に恩を感じてもいる。

 

 それもあって、2022年には、初めて「ゲンロン友の会」にも入会したそのこともあって、その配信プラットフォームを利用するようにもなり、本当は、東京・五反田にある「ゲンロンカフェ」に行って、そこに来た人たちと一緒にトークを見たい気持ちはあるものの、今の、コロナの感染状況では、怖くて、出掛けられず、だけど、見たいイベントがあったので、購入はした。

  あとは家で、こたつに入ってみるだけだったけれど、午後7時から開始で、おそらくは午前0時を回るのは確実だと思えたので、食事もそれまでに済ませて、備えていた。アーカイブがあるから、別にいつ見てもいいのだけど、たまにはライブに近い状態で見たいと思った。

  午後7時になって、まだ始まらなかったけれど、なんとなく微妙に緊張し、期待も高まっていたから、それは、会場に行った時と、近い気持ちになっていたようだった。

 

トークイベント

 東浩紀、西田亮介、辻田真佐憲の3人が、話を始める。

 今回は、2022年を振り返るというテーマだったので、1月からのスライドがあったのだけど、それが出てくるまでの時間がかなりあった。こうした無駄とも思える時間の話は、アルコールが入った登壇者もいるから、かなり笑いもあったり、冗談も入ったりもしながら、突然、話の深度が深まり、その場の色合いが変わる。

 だから、登壇者の3人は、サッカーについてはかなり関心も薄いようだけど、この時間はサッカーのように、展開がダレたと思ったら、急に得点が入ったりするが、それと似た時間が流れていくから、目が離せない感覚になる。

 だけど、問題は、サッカーが90分。延長があったとしても、120分だけど、このトークイベントは、その時間をかけて、まだ2月の段階だった。

 

 だから、これから、どれくらいの時間がかかるか分からなかった。

 これまで、こうした配信の番組は、自分が都合がいい時に、アーカイブで視聴していたから、前もって、トータルの時間がわかったけれど、今回は、ライブで見ているから、これからの展開は分からなかった。それが、画面を通してとはいえ、生のトークイベントの気持ちに少し近づけて、ちょっとうれしかった。

 

真っ当であること

 2022年は、2月にロシアのウクライナ侵攻によって、時代が変わってしまったことを改めて確認できるような話になり、さらに7月には国内で安倍元首相銃撃事件があって、暴力がテーマになるような年になったことについても話し合いが続いた。

 そのことによって、登壇者とも縁の深い宮台真司襲撃事件まであり、空気が変わった1年であって、そう考えると、怖さが襲ってくるような年であったのを、視聴しているだけでも、再確認する気持ちになった。

 休憩を何度かはさみながら、時間は進み、容赦なく、午前12時もすぎる。

 まだ終わる気配すらない。

 

 さらに時間が進んで、午前2時を過ぎる。

 この暴力の気配の強い時代になったことに関して、3人ともさまざまな視点を積極的に提示していたのだけど、その中で、印象に残ったのは、どんなことに対しても、何より人として「真っ当」であろうとする東浩紀の姿勢だった。

 それは、「バズる」という言葉が象徴するような「目立つこと」「人目を引きつけること」が重視され、古い表現で言えば、「派手な見出しになるような言葉」と比較すると、もっと穏当で、スピードを抑制するような言葉に感じたのだが、それを継続しているのはしんどさもあるのだろうけど、使命感のようなものがあるように思った。

 

8時間47分

 気がついたら、開始して7時間が過ぎているのに、登壇者の3人は、まだ始まったばかりのようなペースで話を続け、考えたら、とんでもなくすごいことではないかとも思ったが、こうしてある程度リラックスをしながら、長く話し、それまで知っていることや、考えていることだけではなく、その話をしている中で、生じた言葉まで出てきているようで、新鮮だった。

 そのうちに、午前2時半も過ぎて、このままでは、最近は、ワールドカップ決勝で、午前3時を過ぎたけれど、それを過ぎそうなので、途中で離脱する。

 五反田の会場には、まだ人がいて、その上で、考えているのがわかる質問をしている人が、何人もいるようだった。登壇者もすごいと思うが、そこにいる参加者もすごい。

 

 翌日、起きて、残りを聞いたのだけど、全部で8時間47分だった。

 午後7時過ぎから始まったトークイベントが、午前4時前まで続き、それが、特別なことでないようにおこなわれているのは、明らかに普通ではないけれど、そういうことができるような平和な時代が続けばいいのに、と願うけれど、それが厳しくなる可能性もあると考えると、ちょっと怖い。

 

 

『ゲンロンカフェ』

https://genron-cafe.jp/

 

 

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