アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

たかくらかずき展「有無ヴェルト」。2017.7.11~8.4。ガーディアン・ガーデン。

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たかくらかずき展「有無ヴェルト」。2017.7.11~8.4。
ガーディアン・ガーデン。

 

2017年7月31日。

 何度か通っていた道。ウエストというお菓子屋さんがあって、ここでは買い物もしたことがあったはずだけど、このそばにギャラリーがあったのは気がつかなかったのか、その頃はなかったのか、そのあたりはよく分からないものの、地下に下る先に知らない場所があるというのは、そんなことはないというのは分かっているものの、謎の場所があるような気がして、微妙な恐さと、期待感があるような気もするが、もっと何回も階段を下ると、それがさらに高まるのは、銀座の別の場所のギャラリーで知ったことを思い出す。
 

 ドアを開けると、一人だけスタッフらしき男性がいる。

 一通り作品を見る。デジタルのあと、という感じはする。こういうグリッドを意識した作品みたいなものは、今は見慣れた、まではいかないにしても、よく見るようになったけど、デジタル機器がこれだけ普及する前にはゲーム関連で8ビットのぎこちない四角の動きみたいなのをかすかに憶えていて、それはどこか無理のあるものにも見えたけれど、今は普通になっている。

 

 だけど、その感じは、今回のメイン展示とも言えるバーチャルな見せ方で、違うものにさせたい、というようなことは分かったような気が少しだけする。

 

 畳に座る。バーチャルにつきものの大きめのゴーグルをつけると、それだけで遮断された感じが強くなり、そこにヘッドフォンをつける。

 

 音に注目してもらえると、画像が変わり「こと」という文字が見えるので、そこを見ていると、また変ります、と言われたが、それがちょっとピンとこないで、ただつけたら、世界が違う場所になっていて、もといたギャラリーとは違う広い空間には確かになっていて、だけど、その注視する、というのがよく分からなくて、このアニメでできたマンダラみたいな世界が広がるだけなのか、と思ったときに、ごちゃごちゃしたものが近づいて止まった。そして「こ」と「と」を表示し始めたので、お、と思って見ていたら、下が抜けた。今まで座っていた畳がなくなり、下がどこまでも縦に穴があくというよりも、空中に浮いているような感覚にもなった。

 

 それがしばらく続いたが、そのあとは、2度とその感じにならなくて、ちょっと不満だったけど、ヘッドフォンとゴーグルをはずした。スタッフの人とすこし話をした。酔っちゃうような感じになる人も、時間が長くなるといるらしい。

 

 有無ヴェルト、というのが、ウムヴェルト=環世界、という意味らしく、すべての生き物は、それぞれ独特の知覚世界を生きていて、そんなことが関わっているらしい。確かヒルかなにかの知覚の話があって、血の匂いと湿気などという条件が揃うと、意識が覚醒するが、それまでは意識が眠ったような状態で何十年も生きていて、その間は、そのヒルにとっては意識がないのと一緒ではないか、というような例があげられて、それで環世界、という概念が語られていたはずだった。

 

 それならば、この作品の中での知覚の変化は、そのそばで動いていたルンバの視点に移動した、ということになっていて、だから、底が抜けたのだというのだけど、あとで考えたら、可能かどうか分からないけど、その視点の高さがガクンと下がる、といったように感じられるようなことになっていれば、それは本当に環世界が少し変った、ということにならないだろうか、といったことを考えたり、身長が10センチ高い視点とか、10センチ低い視点といったシンプルな方が、もしかしたらある意味での驚きがあったのではないか、といったことも考えた。そういうことも検討した上での、この作品かもしれないが。

 

 そのチラシは、丸い形をしていた。こうした文章があった。
 

「増やすことは、正しいことですか?

 作ることは、正しいですか?

 死んだ後もやっぱり、つなげてゆきたいですか?

 消えたくないですか。

 あなたは気づいてしまっている ここが虚無であることに

 き01001011010010でしょう?

 

 この虚無を乗り越えるためには

 誰よりも早く広がるか

 とどまって積み重ねるしかない

 

 あとひとつ、方法があるけど

 いまはまだ、10010ね。

 

 ここからが本番です。

 あなたの名前は100101011

 立派な0100000100000000001001001なんですから」

 

 

 

(2017年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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