2004年7月22日。
妻の期待は高まっていた。ルカという雑誌でも紹介が載っていて、すごくよさそうだった。
2階から、見るのが順路だった。
そこの吹き抜けも使って、シュタイナー&レンツリンガー(オランダ)の作品がぶら下がっていた。去年のベネチア ビエンナーレで「落下する庭」という教会の天井から草花をたくさん下げた作品で注目を浴びたらしいが、その作品を写真で見ただけだけど、それも何だかすごくよさそうだったのだ。
そして、ここにも「ホエール バランス」という名前で、作品が並んでいる。
最初は、「落下する庭」のように様々なものが天井からぶら下がっていて、植物、といっても生花とかではなく、きゅうりとかそういうもので、そして、造花や骨などがいろいろとつながっていて、そして、モビールのようにバランスがとれている。きゅうりにマチ針がささっていたり、様々なものが下がっている。それをマッサージベッドに寝転がって見るようになっていた。最初は、期待が大きかったから、その構成要素がちょっと細かさというか繊細さに欠けて、少しがっかりしたが、ずっと見ていると、空調の風のせいか微妙に揺れて、そして、何しろ建物の壁に出来た影が、いい感じだった。
ただ、カップルが来ていて、男性が、そのベッドの上にずっと寝転がっていて、下手すれば、うつぶせに寝ていて、3つしかないベッドがそのカップルで2つはふさがっていて、そのせいか、もっとゆっくりしたかったのが、ちょっと残念だった。そのカップルは、4階まで見た後も、まだ寝転がっていた。それは、私にはちょっと怒るような気持ちだったが、妻は、こういう風に現代アートが役に立ってよかった、という気持ちになった、という。
後は赤い結晶の柱があった。尿素を流していて、それが水分が蒸発して大きめになってきて、というものだった。さらに、くじらの三半規管を絵に描いてあって、それは人間と変わらないという話だった。
円空の仏像もところどころに並んでいたが、ちょっと唐突だった。
それから3階へ。
3階にある作品は、いろいろ難しいことが書いてあったりもしたが、イアン・ケアというイギリスのアーティストだった。今回の作品は、もしかしたら、手抜きなのか?それを知的に見えるハッタリで何とかしようとしているだけなのか?と疑ってしまうようなものだった。でも、私の理解が足りないだけかもしれない。
4階は、暗くなっていた。
スライドが映っていて、それがどんどんと変わっていく。すべて植物だ。
スパイスガーデンという作品名。アーティストのトーマス・フレヒトナーが、南インドのケララ地方では地元の人がすでにあるジャングルに新しい植物(スパイス)をさらに植えて、もっと密集させているらしいが、それがフレヒトナーにとっては、小さな楽園に見えたらしく、そこに滞在して撮影したものだった。スイスの病院にも、一部屋一部屋に、写真としてあるというのも説明で知った。
それから、クー・ジュンガ(フランス/韓国)の作品。
部屋のほとんどをしめるような壁のような箱のような白い箱。
それは170センチの台らしい。
そこを見るには、飛び跳ねるか、壁際にある台に乗らない、といけない。
そして、作品は、その箱の奥の方に小さくあった。細かい家がいくつもあって、そのうちの一つに明りがついていた。その横にゴミのような山みたいなものがあった。なんかなつかしかった。よかった。台のそばから、背伸びをするように、ほとんど飛び跳ねるように見て、それが、よかった。
これで、終りかと思うけれど、まだ、外にあった。
地図を見て、歩いた。外の横道の路地みたいなところを通り、そして、寺があったり、こんなところにアパートがあったり、というような気持ちがしたりして、3ケ所に絵があった。フェデリコ・エレーロという人の作品。家の玄関のそばだったり、庭の柿ノ木のところにあったりと、その場所はおお、と思ったが、その絵が少し物足りなかった。だけど、その散歩は楽しかった。
全体でも、見てよかった、と思った。
(2004年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。