アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「加藤久仁生 展」。2012.2.10~3.25。八王子市夢美術館。

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加藤久仁生 展」。2012.2.10~3.25。八王子市夢美術館。

 アニメがちみつでよかった。というより、この時代に、これだけ丁寧で、ある意味では新しくない、というようなノスタルジックな絵柄のものを作り続けられる環境がすごいと感心もした。この短編アニメは、何年か前のアカデミー賞の短編アニメ部門賞をとって、すごく注目されていたが、今までちゃんと見たことはなかった。その原画というか、ラフみたいなものから展示されていて、その細かさとちみつさと、これで、まだ絵コンテ?というくらい完成度が高くて、なんだかすごかった。

 

 それから、「つみきのいえ」を見た。水に沈んだ世界。そこに、どの家もビルのように積み上げて、人が住んでいる。一人のじいさんが、家の中でつりをしたりしているが、水位が上がって、また今の家の上に家を作る。その途中で愛用のパイプを下へ落としてしまい、いったんはあきらめるが、潜水用具を貸してくれる業者があらわれて、下へもぐる。自分の家の下へ。パイプを拾ったが、少しちゅうしょして、さらに下へ。もう10段以上も積まれた家の、その階に来るたびに、思い出が蘇る。ベッドが置きっぱなしになっていて、そこは、妻が寝たきりになり、介護をしている思い出が浮かぶ。

 

 その下に行くほどに、自分が若くなってきて、そして、最後は一番下に着く。塔のように、高さが違う家が水中に並ぶ。まだ生きている人がいる家だけが、おそらくは高く高く、水面から顔を出すように高くなっている。一番下は、小さい家。まだ水がなかった頃、自分も若く、妻も若く、二人でワインか何かを飲んだ記憶。そこには、古いグラスが落ちていて、それを拾い、また新しく積んだ部屋で、2つのグラスにワインを注いで、というシーンで終る。歳をとった人間ほど、グッとくると思ったら、妻は泣いていた。

 

 その作品が評価された後、もっとラフというか、情景という、ある場面を切り取ったようなアニメを作っていて、それが、よかった。短い場面だけど、叙情的になりすぎず、リアルさもあって、こういう方向へまた行けるのがすごいと思った。

 

 

(2012年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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