2019年10月19日。
不思議な印象があったのは、壁一面に覆われた目立たない微妙な色合いのものを、展示の光景の映像で見ていたせいだった。それが、実際にギャラリーに来て、アルバムの台紙だと知った。それも、昔のもので、写真をはるために、4角についているシールみたいなものは、まだ残っているし、その上、たぶんいい家のアルバムだったせいか、きれいな文字で写真の説明があったり、さらには戦前のようで軍隊に行った人みたいな表現もあって、ギャラリーのオーナーにさらに話を聞いたら、アリスというのは、このギャラリーは民家であって、その改装の時に出てきた8ミリテープに、この家で飼われていたアリスというネコの映像があって、それをスタートとして古いアルバムをヤフオクなどで購入し、その写真をはがし、それを映像に残し、動物が写っているものだけをアルバムに残し、といった手続きをして、あとは別室にアルバムの表紙を残した作品を並べている。
その写真を作家が、はがし続ける映像を見ていると、オークションで手に入れた作者とは縁もゆかりもないものだから、はがしかたに容赦がない、というか、当たり前だけど、ちゅうちょがあるわけでもなく、それが興味深いのだけど、それを見ている人間が、写真というものの価値というか気配みたいなものがただの物質ではない、といったようなことを嫌でも感じたりするし、何の関係もないはずなのに、そこに人間の声があったり猫が動いていたりすると、感情は動く。
この作品群を写真家が企画して、制作したというのが、アナログとかデジタルとか、そういった変化も大きいのだけど、それも超えて、映像や写真のあり方みたいな、大げさだけど、そんなことを思わせてくれたから、それは成功した展覧会だと思った。
(2019年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。