アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

Artists in FAS 2018 入選アーティストによる成果発表展。2018.10.6~11.25。藤沢市アートスペース。

Artists in FAS 2018 入選アーティストによる成果発表展。2018.10.6~11.25。藤沢市アートスペース。

2018年10月10日。 

 どこかへ出かけて、その帰り道によるギャラリーは、自分だけの感覚だけど独特の解放感があって、これは仕事を毎日のようにしているときに、仕事が一区切りついて、それでわりと早く終わったあと、どこかに寄ることが出来たときと似ているのかもしれないが、以前、そうやって働いていたのは、もう20年以上前のことなので、それは本当に感覚としても記憶にも残っていないし、さらには自分も時間がたってその分老化していることもあって、よけいに分からなくなっているのかもしれない。

 

 辻堂駅を降りて、まだ新しいイメージのある大きなショッピングモールを横に見ながら、歩いて行くと、空が広く見える公園があり、それも、新しさがあるし、時々、子ども連れの親子がいたりするけど、当たり前だけど、親も充分に若いことも多いので、その公園のパラダイス感はすごくあって、一定以上の収入があれば、すごく住みやすく幸せを感じさせる場所で、その近くのビルの6階にギャラリーがあるのだけど、1階にはボルダリングの出来る場所があったり、このビルのかなりの部分が、ダンスだったり、学習だったり、体操だったり、と子どもが学ぶ場所が集中的にあって、だから、小さい子ども達と、若いお母さんがたくさんいて、そういうところにある独特の空気感があって、とてもざわざわとしてエネルギーがあちこちであふれている、といっていいのだけど、エレベーターを降りると、いつもほとんど人がいなくて、やたらと静かなのは、ありがたいけど、こんな人が来やすい場所にあるのにもったいないと思ったりもして、これだけ人が来ないと、そのうちに閉鎖されてしまうのではないかと思ったりするくらいだけど、ゆっくりと荷物の整理をしてから入ろうとしていたら、廊下の向こう側からスタッフの女性がリーフレットを持って、笑顔で渡してくれた。

 

 最初の部屋には、熊野海の作品。

 具体的なイメージが、あれこれたくさんつまっていて、重なったり、あちこちに描いている絵画。横尾忠則を思わず思い出してしまうようなこともあったのだけど、ただ、しばらく飽きずに見ていられた。大きさが、2メートル×4メートルくらい。そのくらいあると、視線を移動させて、楽しめる時間があるけど、その大きさを仕上げていくにはとんでもなく時間や手間やテクニックもいるだろうし、などとも思うが、見ている側であると、もっと面白いものを見たい、刺激を受けたい、もっと感心したい、みたいな下心がわいてくるものの、その部屋には、作品を作っていく過程も映像で記録されていて、この像は、こういうものだったのか、ここから描いていったのか、そんなことを思いながらも、その映像が3分くらいだと飽きずに見られるし、全部を見ようと思うので、映像作品は長すぎると見なかったりすると思ったりもして、最近は、短めにまとめようとしている、と感心もしたりしている。

 

 熊倉麻子。映像作品。20代半ば。物心ついた頃に「エヴァンゲリオン」が放送していた世代。こういうものを見て育ったら、活字を読んでくれなくなるのではないか、といった危機感みたいなものを感じたことを久しぶりに思い出させる瞬間もあった作品。すごく自然に、自分が見たいイメージを映像にしている感じがしえて、力みがないから、たとえばクレヨンで描いた落書きみたいな印象があるような時間が流れる。それも、10分足らず。豊かとも違うし、チープ過ぎたり、ぞわぞわするような刺激もなかったが、ぼんやりと見て、あきないで時間が過ぎるような感じだった。

 

 金沢寿美。新聞紙を塗るようなドローイングをして、といったことを文字で読んでから、ギャラリーに入ると、思った以上に広いテーブルのような場所に新聞紙を塗りつぶすような作品が広がっていた。しばらく見て、いったん出たあとに、観客も鉛筆で塗っていいことを知って、引き返して、鉛筆で塗った。

 

 もう一人、二ノ宮久里那の作品は、階段を降りて、吹き抜けにあります、2階から4階の。と言われて、下ったら、思ったよりも巨大な敷物みたいなものが取り付けられて、このビルにいる子供たちがいて、いろいろな声がして、2階には、そのお母さんたちと思われる人たちが座っていた。誰も、この作品のことは目に入っていないようにも見えた。

 居心地がいいビルだと思った。

 

 

(2018年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

www.city.fujisawa.kanagawa.jp

 

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