アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「A Nightmare Is A Dream Come True: Anime Expressionist Painting」 展。2012.5.25~6.21。カイカイキキギャラリー。

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「A Nightmare Is A Dream Come True: Anime Expressionist Painting」 展。2012.5.25~6.21。
カイカイキキギャラリー。

 

2012年6月21日。

 

 気になっていた。村上隆ステートメントは、誠実でウソがなく、それでいて説明がこれでもか、とされている。西洋のルールにのっとって、という事なのだろうが、それが、そのジャンルに詳しくない人間でも参加できるようになっている。批判も出来るように、話し合いも出来るように、難しい言葉で、どこか高い場所を飛んで行っているのではなく、すぐそこで話しているような印象。カオスラウンジを日比谷で見た時は、2年前だった。確かに新しさを感じた。乾いた大竹伸郎。もしくは、それからたくさん聞く事になる「共有」という考えを形にしたもの。これが、成熟したり、きちんとした「枠」が与えられれば、それはそれをきっかけとして、批判も受けながら成長していくものになるはずだった。その後、著作権に関わるトラブルが起こったらしく、その経緯は正直、まだ理解していない。村上隆のラジオ番組で、あれだけ村上に「これからどうする」「どうやって位置づける」と黒瀬陽平は、しつこく聞かれていて、それは村上にとっては冗談ではなく、本気だったようだけど、そこで黒瀬は、きちんと答えることができていないようにリスナーからは思えた。そういうことと関係してくるのかもしれない。

 

 そうした「カオスラウンジ」のムーブメントを踏まえた上での、そこからの第2幕としての「悪夢のどりかむ」ということらしい。それは、とても簡単にいえば、とてもうまいアニメ絵。という事らしい。精巧なフィギュアを作って、アートの歴史にしてしまった村上隆としては、もっと早くそれをやってもよかったのかも、とも思えるが、カオスラウンジのいろいろがあったことが、今につながっているのかもしれない。

 

 最終日。雨が少し降っている。

 普段はほとんど行かない広尾に行くのは、このギャラリーに行く時だけかもしれない。

 入り口に入ると、おぐちの作品。私は、この人の絵が一番好きだった。実在感に無理がなく、その絵は、だけど、西洋の画法ではないのだろう。そこに描かれている若い女性も素直に可愛いと思えた。ただ、目は違うものになっているが。そのオタク絵が、(このジャンルのことは理解していなのだけど)キャンバスに描ける、という事が新しい、というのがピンと来ないが、でも、実物は、普通にあって、見慣れたもののようにある。

 

 おぐち。ひるき。JNTHED。Mr.。NaBaBa。STAG。6人の作家。大きさもあって、完成度も高い。

 

 Mr.の描く絵は、素直にかわいい、と言える作品になり、明らかにうまくなっているように思えた。最初にちゃんと見たのは、2000年のスーパーフラット。レシートに描いていた頃だった。かわいい、というか、ロリコンでは、と思っていたが、今回の完成度を見て、そのロリコンは本物なのだろう、と思い、だけど、こうして精進(そういう古い表現が合いそうだ)の結果、20代前半の作家の中にまじって、遜色がないというか、明らかに上回る何か、それは描いてある人物のかわいさへの執着が、すごい、ということのようだった。

 

 ここから、また始まるのだろう。そして、今日、それほど大きく感動はしなかったが、これから、いわゆるアニメ絵や、オタク絵を見た時に、あれ?と物足りなさみたいなものを感じた時に、今回の展覧会のすごさを改めて分かるのかもしれない。行けてよかった。そのリーフレットも文字量がすごく、説明に賭ける情熱も、それは、特に新しいものを作ろうとするには必要なのだろうと思えた。

 

(2012年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

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