アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「さいあくななちゃん 個展日本ツアー  ロックンロールスター」。2016.2.25~2.28。中野FREAK OUT。

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「さいあくななちゃん 個展日本ツアー  ロックンロールスター」。

2016.2.25~2.28。中野FREAK OUT

 

2016年2月26日。

美術手帖」のツイッターで初めて、この作家のことを知った。渋谷で、女性のアーティストだけの展示をやっていて、それで賞を決めていたのだけど、受賞者の5人くらいの中で、ピンクで、うわーっとして、ごちゃごちゃしていて、不安定さを隠さないような強い作風の作家の個展があると知って、出かけようと思った。

 

 このところ介護をしている義母がカゼをひき、そのあと妻がカゼをひき、普段より負担が増えた上に、出かける機会が少なくなって、出かけたいと思ったときに、やはり生きて行くうえでアートが必要ということで、それも新しく出てきた人達の今の作品を見たい、という気持ちになっていたと思う。

 

 中野駅から歩く。ブロードウェイの先まで初めて歩く。オリジン弁当の向かいにギャラリーがあると思ったら、急にピンクが見えた。カセットテープの形になっている。奥が美容院で営業中。普通に髪をカットしている光景があるが、その手前が混沌としているようで、こぎれいなスペースになっている。小学生の女の子が描くようで、でも、ここまでは思い切って描けない種類の絵。女の子の顔。その中で時々、文章。リストカットという文字も見える。

 

 その作品はありそうで、なさそうで、何しろウソなく並んでいた。

 その一方で、冷静で、その配置とか、ただ、ごちゃごちゃしてなくて、床も、おそらく本当は塗りたいところだろうけど、会場の都合を考えて、自分のピンクの作品のプリントを置いて、それがある種の効果というか、ピンクで覆っているのだけど、重すぎなくなっていた。それは、サイトで見た時の、不安定な印象とは違っていた。それでも、エネルギーは確かに感じる。何か、絶妙なバランスだった。

 

 さいあくななちゃん。その作家名自体も、恨みとか、怒りとか、そんな感情がスタートになっているようで、だけど、作品を見ていて、話しかけられた作家本人は、普通の感じのいい若い女性だった。いつから、こういう作風なんですか、と聞いたら、「デザインの専門学校へ行っていて、その時にイラストレーターの先生の姿勢がすごい好きで、それで、こういう風に描くようになりました」と答えてくれて、それから普通に話を続けてくれた。「それよりもコピーバンドをやっていて、音楽が好きで」。「ブルーハーツ」。「友達に好きな子がいて。リンダリンダをやりたくて」。「好きなアーティストは大竹伸朗とか、奈良さんが一番好きで」、いろいろと話をしていたら、楽しかったけど、気を使って、話を合わせてくれていたのかと思って、申し訳なくなった。

 

 作品集も買わせてもらった。CDジャケットのサイズにしていて、その作りも、気を使っていたし、DMも完成度が高かったから、そういうことも、なんだかすごいと思った。

 

 そのギャラリーに「神聖かまってちゃん」の「学校へ行きたくない」がかかっていて、それが作品に、すごく合っていたけど、作品を作り続けて、そして、気持ちが浄化されて、穏やかに、普通になっていくことはあるのかもしれない。そういう姿を見てみたい気もするし、でも、奈良美智大竹伸朗が好きというのが分るような作品だったし、ピンクで、このまま「大人」にならずに続けてほしい、という気もする。

 

 この個展は、京都と山梨でも行う予定になっているから、本当に「日本ツアー」で、そういう意味でも、すごいことだと思った。

 

 

(2016年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

 

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