2006年7月24日。
エルメスのギャラリー。本当に普段は縁がないところ。ギャラリーに行くのに、店内を通らなくてはいけない。あまり知らない香り。自分にとっては違和感。そして、奥のエレベーターで8階へ。そこで降りて、普段はギャラリーとしてのスペースを通り過ぎるように、さらに歩いて、鉄製の扉の向こうにある非常階段を登る。雨だから、傘をさして、あがる。下には銀座。本当に外階段で、むきだしの屋外の感じ。
そこに、プレハブの部屋。女性。20歳くらい。という設定の部屋を作ったそうだが、微妙にずれている気もする。だけど、ベッドの上に馬に乗った大きい騎士がいた。エルメスのシンボル「花火師」の立体。その由来とか呼び名とか、もちろんなじみがないからピンとこないが、いつも、ビルの上にあるシンボルで、本当に地面から見上げるしかない立体が、さわれる。すぐそばにある。思ったよりもきれいだったり、アニメチック、だと思ったりもする。だけど、何しろ、ここでしか見られない風景。もう2度と見られない感じ。テレビが映像でも、これは見たけれど、やっぱり違う。圧倒的に大きく感じるし、よく見ても不思議な感じは変わらない。そこまでガイドしてくれた女性と少し話して、作品のことがより分かった。考えたら、ここは一種の密室で、妙な場所にある変なところだった。
この作品を制作した西野というアーティストは、去年の横浜トリエンナーレで、恥ずかしながら、初めて知った。公園の屋根みたいなものを生かして、そこにホテルを作る、というもので、実際に泊まれたみたいで、泊まりたかった、と思うくらいのクオリティーだった。
他の作品は、写真で見た。「天使」。教会の一番上にある天使の像が、部屋の中のオブジェになるように、その高い場所に部屋を作っていた。かなり汚れているのが分かったけど、面白いと思った。今回の「天上のシェリー」も、同じような面白さだった。意外性と、予想と、それとは微妙にずれる実際の現場、といった要素が共通していそうだった。
この人の作品は、もっと見たかった。ただ、場所などを提供してくれることがないと、成り立たないので、改めて、この作品に協力したエルメスは、すごい、と思った。階段を降りて、そこにいた女性スタッフも、気持ち良く対応してくれたのに、エレベーターに乗って、1階へ降りて、また店内を通る時は勝手に緊張して、息を止めるようにして、外へ出た。
「天上のシェリー/西野達 展」
https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/forum/060602/
2006年7月24日。
そこから、汐留に行く。
岡本太郎の壁画。
雨のため、ステージに登れない。
並んで待つ。裏から、修復の後を見る。
実際に見ると、期待が大きかったせいか、たとえば何十年かぶりに見た「太陽の塔」のような気持ちにはなれなかった。
でも、来てよかった。
ずっと行方不明で、30年以上たって、見ることが出来たと、やっぱり不思議だった。
すぐそばのドーナツ屋がベストポイントではないか?と「ほぼ日」で読んでいたので、そこに行って昼食を文子と食べた。目の前に壁画がある。ぜいたくな昼食だと思った。
後日、晴れた日に、また見にきた。行かなくてはいけない、みたいな変な義務感と見たい、という気持ちがあった。
行ってよかった。
ステージに上がれた。
ほんの数メートルの違いだけど、やっぱり、そばで見られてよかった。距離が近いだけで、伝わってくるものが、違う気がした。
太郎マネーを、買った。
(2006年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。