アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

柳幸典「ワンダリング・ポジション」。2016.10.14〜12.25。BankART Studio NYK。

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柳幸典「ワンダリング・ポジション」。2016.10.14〜12.25。

BankART Studio NYK

2016年12月22日。

 

 今年、直島に行き、そこのホテルのミュージアムで、柳幸典の作品をゆっくりと見た。それは、「ワールドフラッグアントファーム」で、それも、ヨーロッパのみのパターンだったが、その中央に最初は何もない旗の型にただの平たい四角の空間だったのに、砂でできた各国の旗が細いパイプでつながれ、そこにアリを放つと、あちこちに穴を掘って進み、混ざりあっていき、その真ん中の空間にも、いろいろな色がまじった砂が半分くらい形がなく、積もっていて、それは、アリの動きによってできたということを、その場所のスタッフに聞いたことで、そのことによって、その作品の意味がより強く伝わってきて特に妻は感心もしてしまい、そのこともあったので、柳の個展をバンクアートでやると知って、行かなくちゃ、と思っていた。

 

 でも何度も自分の体調の悪さもあったので機会を何度も逃し、やっと会期ギリギリに行けることになったが、その前に会期延長のメールも来た。

 

 馬車道の駅。横浜の港は、いつもやっぱりどこかへつながっているような気配があるのは、海があって、その海は遠くへ出かけるための場所であって、それは、江戸時代から、遠くから来た人たちによって無理矢理開かれた港である、ということなので、新しさが、そこから続いていて、その一方で、百年前の最新版のあれこれが、残っているものから推察すると、すでに歴史になっていて、不思議な空気感になっている、ということかもしれない、などと、駅を降りて、バンクアートに向かう間だけでも、感じさせるものがあって、自分は横浜生まれといっても、はずれだと、まったく違う土地であるというのは、改めて分かって、それで、やっぱり横浜らしい横浜で育った人に、うらやましさがあり、その洗練とか、文化度の高さは、どうやっても届かない感じがしたことを、わりとぼんやりとも感じていて、現地に着く。

 

 運河のすぐそば。海面が見えて、倉庫を改造した広さがあって、ギャラリーというには、広くて、そして、その場所で川俣正の展覧会もあったし、ボートも乗ったし、と観光気分も味わえる場所で、柳幸典は、ものすごくベテランだと思っていたが、実はまだ50代後半で、だからその実績の蓄積に、より凄さを感じる。

 

 1階から3階まで。

 1階の展示は、日本国憲法。それも9条そのものをテーマにしたもの。条文が、赤い文字で流れて行き、それはとてもキレイで、いろいろなリズムで流れたり、英語になったりしているが、見ていると、この文字の色は青とか緑のほうがいいのでは、とか、条文も中国語やハングルやアラビア文字などでも表現するべきではないか、等とも思ったりもしたのは、黒瀬陽平のツイートを見たせいもあり単に影響を受けただけかもしれないが、旗の作品は、アリを使っていて、それも含めてすごくて、こういう作品を作ったら、それはどの国でも評価されて当たり前だと思うし、今回もやっと本格的のこの「旗」の作品も見られて、ああ、というような感動もあった。

 さらに犬島の作品の一部を、この会場に再現した、鏡を使っている、どこにいるのか、どこに向かっているのか、という不安すら出て来る作品は、素直に凄いと思えたし、アトラクション感もあった。

 規模感は大きく、とてもありがたい展覧会なのは、間違いなかった。

 

 

 

(2016年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

bankart1929.com