アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「グッドタイミングクラブ2012」。村上福寿郎 個展。2012.3.1~3.13。 Hidari Zingaro。中野ブロードウエイ。

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「グッドタイミングクラブ2012」。村上福寿郎 個展。2012.3.1~3.13。 Hidari Zingaro。中野ブロードウエイ。

2012年3月8日。

 村上隆の父の展覧会、という事で、親孝行というか、強力なコネ、というか、そんな言葉が最初は浮かんで、行く気もそれほどなかったが、村上隆が、この展覧会のことを紹介した文章を読んで一気に興味が高まった。村上氏の父親が、自分の亡くなった父親と同じ歳だった、ということもある。

 

 戦後、貧乏の中で自衛隊に入り、いろいろな免許をとり、タクシーの運転手になり、という道のりや、その生活の様が、戦後史、などという大きな流れを読んだ時よりも、ぐっとくるようなものでもあり、リアルであり、そういう時代の中で、息子がアーティストとして活躍しているから、それで作品を作り始めていた、と思っていたら、もっと昔から、30年も前から作っている、というのを知り、さらには、世の中の理不尽への怒りがあって制作している、という事まで分かり、作品を見たくなった。ある時代の、ある思いが凝縮しているような気がしたからだ。

 

 それも、この「グッドタイミングクラブ」というタイトルも、戦後、坂本九が歌っていた「ステキなタイミング」からとった。そして、村上氏の父親の言葉。「この世の矛盾は日々の事。しかしそれが積もって生きながらえ振り返ってみれば、良き日日だった、そういうことさ」。うがってみれば、やや芝居がかっているかもしれないが、でも、本当だと思った。父の最期はもう言葉をしゃべれなかったし、62歳、という今から思えば若い年齢だったから、こういう気持ちになれていないんじゃないだろうか、という微妙な悔しさもありつつも、なんだかすごい言葉だと思った。

 

 展覧会は、怒りが、というような事がない、だけど、板にペンキを圧塗りしただけの作品は、いい感じに抜け感もあり、5000円くらいの値段が付けられて作品が、かなり売約済みになっていた。私も、368円のバッジを買った。不思議な空間だし、こういうものを作り続けてきた、というのは、やはり非凡さも感じ、遺伝とか、環境とか、そういう事ばかりで語りたくはないが、この父親がいて、アーティスト村上隆もあるのではないか、とやっぱり思った。不思議な作品で、それでも、津波くるな、というタイトルがあったりと、大震災の影響もあるが、タイトルがなければ、それと分からない味わいがある作品ばかりだった。

 

 

(2012年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

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