1998年12月25日。
映像の作品は、動いていて、でも、その変化が遅すぎると感じたり、ただ膨大な映像が出ているだけだと飽きてしまったりと、あんまりおもしろいものを見た記憶がない。それだけ、普段から様々な映像に慣れてきた、ということかもしれない。
ただ、この展覧会は、全体として、妙にざらついていたり、冷えた感触があってリアルだった。チック症状の女性の顔のアップとか、こっちを神経質そうに見ている目だけの映像とか⋯⋯。もしかしたら、もうすぐ自分にやってくる母の病気の予感みたいなものもあったかもしれない。暗い気持ち。冬の感じ。この展覧会のことを思い出すと、今でもその感覚が漂ってくる。
その一方で、壁で区切られた通路を通ると、そこのどこかの部分でセンサーが働き、声と水音がして、部屋の真ん中のスクリーンにつく頃には、ただ川か何かの誰もいない風景が映っているという作品。何回か試してみても、同じだったので、センサーの位置を確認して、そこを通り過ぎてからダッシュすると、そこから去ろうとするハダカの女性の何人かの後ろ姿を少しだけ見る事ができた。水浴びしていて、人が来ると逃げていく。それも、ただの映像。何度かダッシュしている自分は、愚かな欲望で動かされていると感じる。
それから、クレジットカードを入れると吸い込まれ、小さな映像でクレジットカードらしきものを真っ二つにする画像が流れる作品。フィクションと分っていても、ドキッとし、こういうカードをものすごく大事にしているのに気がつく。そして、クレジットカードが出てくる時に、紙のお札みたいなものが出てくる。
結構、おもしろかった。
(1998年の時の記録に、2000年に少し加筆し、その後に修正もしました)