アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「オソレの品種改良」。ゲンロンカオスラウンジ新芸術校 第四期グループA。2018.9.15~9.23。カオスラウンジ五反田アトリエ。

f:id:artaudience:20220211142702j:plain

「オソレの品種改良」。ゲンロンカオスラウンジ新芸術校 
第四期グループA。2018.9.15~9.23。カオスラウンジ五反田アトリエ。

 

2018年9月17日。

 カオスラウンジのホームページで、今回のグループ展があると知った。カオスラウンジでは、ゲンロンカフェで新芸術校第4期に参加しているアーティストの人たちが開く展覧会で、それは、いってみれば学生さんの展覧会なのに、第1期には弓指氏がいて、その展覧会が何だかすごくて、その上でその作家の人たちの姿勢が、本当に真剣で、誠実で、作品についての会話自体が、いろいろと感心することも多かったのだけど、ここのところ試験があったりして、そのために他のことが置き去りになるくらい忘れてしまっていて、だから、このグループ展も見られないのではないか、と思っていたが、出かける用事が出来て、帰りに寄れそうな時間に終わった。

 

 五反田で降りて、歩いて、その途中でもう雨が降り始めていた。微妙に複雑な道筋で、五反田で裏道に入るから、誰か知っている人が見たら風俗とか、そういう所に行くと思われるような場所で、そういえば、御徒町でちょっと奥に行ったら、日曜日の午後でも、お兄さん遊びは?とカジュアルなお兄さんに声をかけられるくらいだから、繁華街といわれるような場所は今でもそんなようなことなのだろうけど、五反田の坂道を上がって、何度か行く場所に着いたら、ドアが開いていて、中へ入ったら、緊張した青年が、雨の中足元の悪い中をありがとうございます、といった言葉をかけてもらったのだけど、こんなに丁寧な言葉はギャラリーというか、アート関係の場所で初めてだったと思う。

 

 一応、名前も書いたのは、何の力もないけど、数になると思って書いたのだけど、最初の作品は、三浦春雨。掛軸が並んでいて、3枚のうち1枚は下に置いてある。オウム真理教事件のことをテーマにしている。それも、一枚は、最近のオウム真理教の信者や、教祖の死刑のことを描いていて、それで、その中に、この死刑がテレビの放送で、まるでゲームみたいに見えたといったことや、オウムに関してはまだ考えなくては行けない、と言った直接的なことも文字で書いてあるけど、それは、覚悟でもあるだろうし、正面からそれを描こうとしている宣言にも思えてくる。まだオウムは終わっていない、という言葉は、死刑が続いた日には見たが、ただ、オウム事件に関して、表現する人が扱っていたような記憶もあまりないから、だけど、壁の向い側には、青いというか、何か灰色とか、そんな色が混じっている抽象的な絵画があったが、それはパッと見て、なんだか分からなかった。あとで、作家が話してくれたのは、今の平成という時代が終わる時に、いろいろなことも忘れられてしまうし、重要な出来事としてのオウム真理教事件のことを扱いたい。そして、これからも扱いたい、という話をしていて、それは観客としては有り難かったが、何か反響への覚悟もいるだろうな、とも思った。見せられない作品は、そのまま麻原彰晃を描いてあるもので、確かに今は難しいのかもしれない、とも思った。そして、抽象的な絵画も、そうした時代のことを考えるだけでなく、自分はどうなんだ、と問いながら、厚く作ろうとして、人が描いてくれた自画像も、この中に取り込むように作品していると教えてくれた。

 

 そのそばに、ぬいぐるみなどがたくさん置いてあって、祭壇というタイトルの作品は、BeBeという作家が作っていて、その造形のズレみたいなものに魅力は感じるが、全体としては、何か伝わってくるものが分かりにくかったが、でも、わかりやすいものだけを見る人間として求め過ぎているのかもしれない、とも思った。

 

 その奥に丸い大きい円盤があり、それを回して下さい、と言われると、中に入った水がそこにあって、それは、船の沈没がテーマだと聞いて、でも、沈没としては軽く見えすぎるというか、伊賀大という作家の話の方が面白かった。「※この信号に意味はない」。何でも経験だけが大事ではないが、だけど、本人は船の学校に行っていて、というので聞いたら、防衛大学に通っていて、といった話をして、その進路を挫折して、アートを作っているという話を丁寧にしてくれた。

 

 そのあとに「R−18」の「立ち入り禁止区域」(8108)。浦丸真太郎の作品は、中に入る作品だった。真っ暗で、帰りにケイタイの灯りをつけてください、といわれ、もっていないので、灯りも借りて、中に入る。暗い中を歩くと、それだけで不安だったり、鏡だけはあるのは分かるが、ほぼ暗闇の鏡はやっぱり微妙にこわい。そして、突き当たりになったので、灯りをつけると、フルーツの微妙な腐ったような甘い匂いと、ベッドがあって、それはあやしい感じがあると、小さい紙に、おそらく作家が、小さいころの辛い経験のことなどが書いてある。立体や、鏡や、何かしらの象徴のようなもののそばにメモのように、そうした文章があって、それを探す感じになりながら、入り口に戻ってくる。作家に聞いた。製作する時に、陶酔感があったり、作ることによって、励まされたと言ってくれるような人もいたし、アートに関わるようになってモノクロの世界に色がつくようになったといった話を聞いた。

 

 充実した時間だった。外へ出たら、すごく強い雨が降って、服もぬれた。

 

 

 

 

(2018年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

chaosxlounge.com

 

www.amazon.co.jp